燃え盛る炎で体を焼かれるよりも、

 

 絶対零度の寒さで心さえも凍ってしまうよりも、

 

 幾万の針の山で声が声にならないほどの痛みよりも、

 

 何よりも・・・苦しいのはなーんだ?

 








 

 

 

 

なぞ

 








 

 

 

 

 「ヤコ、謎はないのか?」

 

 

 天井からいつものようにぶら下がった状態でネウロはそう言った。

 表情はそれほど変化無い様にも思えるけれど、長くこうして一緒にいるとどことなくわかってくるようで。

「・・・そんな急に言われても・・・」

 宿題を客用テーブルの上に広げながら私が曖昧に答えると、思いっきり頭をつかまれてグググと力を込められる。

「痛い痛い痛い痛い!!?わかったわかったって!ちゃんと考えるから!?」

 

 素直にそう言えばいいんだ・・・みたいな顔で、ネウロは頭から手を離す。

 ひらりと天井から降りてきて、いつもの自分の席へと腰を下ろし、「さぁ?謎はどこだ?」なんてにっこりと笑みを浮かべた。

 

 こうしていれば普通の人間にしか見えないのに。しかもどちらかと言えば美形の部類に入る。

 少し変わった髪形もこうしてみれば・・・おしゃれに見えなくもない。

(・・・人間ではないけどね・・・)

 ふとネウロの姿を見つめながらそんな事思っていれば、

 

「・・・な・ぞ・は・ど・こ・だ?」

 

いつの間にかまた側にいて頭をつかまれていた。

「痛い痛い痛いイターーーーイ!?」

 

 




 

 学校で山ほど出された宿題が、テーブルの上ででーんと待ち構えているというのに、私はなぜかTVをチェック。

(こんな事している暇ないのになぁ・・・今日たくさん宿題出されたのに・・・)

 文句を言いたいけれど文句も言えず、色んなチャンネルのニュースを観ていれば「どうだ?」なんて催促の声がかかる。

「あのねネウロ。そんな簡単に事件なんて起こる訳がないでしょ?って言うか、そんな簡単に事件も起きてほしくないし・・・」

 ため息と共にそんな事を愚痴って、ちらりと進まない宿題を見る。いつになったらできるんだろう・・・なんてふと思えばある考えが
頭に浮かんだ。

 

「・・・ねぇ?ネウロ・・・?あのさ・・・[なぞなぞ]とかってのはだめ?」

 

 面白くないとか、気に入らないとか言われるかと思いながら、恐る恐るそう声をかけてみれば「なぞなぞ?」と珍しく考え込むよう
な真似をしていた。

「そ・・・そう!なぞなぞ!・・・子供遊びだけど、暇なら事件が見つかるまでなぞなぞしない?」

 反応は悪くない、そう思えばTVから離れいそいそと宿題が置いてある客室テーブルのソファーに座り込む。

「・・・まぁ、お前に合わせるのならそれくらいが丁度よいのかもしれんな。」

「・・・・・・・・・。それじゃあ私から行くわね?」

 少しだけこのやろーなんて思ったけど、取り合えず宿題しながらできる事を始めることにした。

 

 




 

 

「もっと難しいのはないのか?簡単すぎてツマラン」

 

 はふぅ・・・なんてバカにしたようにネウロはつぶやけば、さっきアカネちゃんが入れてくれた紅茶をすすっていた。

 なぞなぞを始めてからまだ1時間も経たないうちに私の知っているなぞなぞのネタは全て答えられて、宿題をしながらなぞなぞ
計画も・・・今はなぞなぞを考える方に集中してしまうような状況で。

「・・・い、今考えてるんだから待っててよ・・・」

 子供だましの問題が、ネウロに答えられないわけもなく。私は一人ウンウンとうなっていた。

 

(だいいちあれよね?複雑な事件を解決してきたネウロが、こんななぞなぞなんてわかって当然なのよね?)

 

(しかも私が知っているなぞなぞなんて、オーソドックスなものばかりなんだし・・・もしかして私、自分で宿題できない状況を作っ
ちゃってたんじゃないのこれって?)

 

 そんないまさらな事にやっと気づけば、ガックリとテーブルに突っ伏して。なんかなぞなぞー・・・とか、鞄の中身意味なくあさって
いれば、ふと、思い出したなぞなぞ。

 叶絵ちゃんからずーっと前に出された問題。・・・私とは縁遠いせいで答えられなかった問題だけど。

 でもこんな問題でも、ネウロなら簡単に答えちゃうんだろうなぁ〜なんて思いながらも・・・。

 




 

「燃え盛る炎で体を焼かれるよりも、絶対零度の寒さで心さえも凍ってしまうよりも、幾万の針の山で声が声にならないほどの痛
みよりも、何よりも・・・苦しいのはなーんだ?」

 




 

 半ばやり投げって感じで出した問題を出してみた。答えはなんとも乙女チックなそんなものだけど。

 人ではなくても、感情がある生き物ならわかると思ったから。でも・・・

 

 

「・・・・・・・・なんだそれは?」

 

 

初めて聞いたネウロの疑問符。驚いて顔を上げればネウロは顎に手を置いた状態で考え込んでいた。

 

やった!ネウロが悩んでる!

 

 そんな事も思ったけど、本気で悩んでるような姿に正直驚いたって方が多かった。

 

「・・・え?本当にわからないの?」

「ヤコが言いたいのは、地獄ですごすよりも苦しい事って意味なのだろう?」

「・・・うん。その、地獄がどんな所かわからないけど、まぁ、そう言う様な表現になるね・・・?」

「人間が耐えられないほどの恐ろしさの象徴が地獄と言われているのに、それよりも苦しい事などあるのか、この世の中には?」

「いや・・・まぁ、その・・・そんな感じがするって言うだけであって、実際には違うと思うけど・・・」

 


 私もどう答えていいかわからない。

 だってそれは形があるわけじゃないし、はっきりとしたものとも言えない。

 ただそう・・・そんな感じがするだけ。

 








 

 人間ではないネウロにはわからない感情なのだろうか?

 

 魔人でもそんな気持ちにならないんだろうか?

 

 

 

 

 

 人間と同じようなのに・・・恋はしないのかな?

 

 

 








 

 

「ヤコ、まったく理解不能だ。お前は答えもはっきりしないものをなぞなぞと言うのか?」

 少し面白くないようなそんなネウロの声に、やっと私は我に返って、ゴメンゴメンと誤魔化すように笑うしかなかった。

 

 







 

 

 

(・・・ネウロは、人を好きになる事ってないのか・・・)

 

(・・・恋をするってわからないのか・・・)

 

(・・・そっか、わからない・・・んだ)

 

 

 

 

 

 ドキドキと体中が火照ってしまう様に、

 

 ヒュルリと心が寂しくなるように、

 

 チクンと言いたい事が言えない切ない痛みが、

 

 恋なのだという事を。

 

 

END


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またまた出ました突発ネウロ。
いやなんかもう、ちょっと只今フィーバー中(//▽//;)テヘv

ネウヤコのつもりで書いていたんですが、これだとまだヤコもまったく気づいていないというかなんと言うか。
いつかこれぞネウヤコ!!!ってのを書いてみたいですわ〜(笑)
つうか、その前に・・・ネウロのキャラの性格を把握しておかないとね?( ̄▽ ̄;)





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