色々忙しくて。





 考えなくちゃいけない事もいっぱいで。





 なんだか妙にイライラしてて。





 こんなんじゃいけないと思ったけど・・・どうしようもできなかった。





 だからあんな事になったんだと思う。











僕が僕であるために











「だからっ!俺が言いたいのはそうじゃなくて!」








 今考えれば、たいした事のないこと。でもそれが妙に腹が立って、うまくいかなくて・・・みんなが驚いた顔をしていた。




 めずらしく俺が怒っていたから。







 ヨースケは困った顔をして、ケンイチは少しだけムッとしていた。加藤は少し悲しそうで、おっくんはものすごく驚いていた。そして加納は・・・・・いつもの通りポーカーフェイスで黙っている。





「あっ・・・ごめん。もう少しメリハリをつけるんだったね?」





 加藤はそう言ってもう一度楽譜の方に目を向ける。俺が今怒鳴ったのは加藤に対してだった。





「・・・なぁ?少し休まへん?」






 おっくんがそう言うと、ヨースケも少しホッとした様にうなずいた。

「そ・・・そうだな?少し休憩してそれから・・・・・・」








「あぁーっもう!今やらなくちゃ時間がないだろっ!それに休憩なんかして、今の感じを忘れてもう一度できるのかよっ!」








 まずい・・・そう思ったのはもう後の祭り。


 一瞬にしてブースの中にいやな雰囲気が流れた。みんなの視線が俺に集まり・・・ケンイチがさらにムッとして声を低くする。


「なんだよそれ・・・レオお前少し言いすぎだぞ?・・・さっきから、何イライラしてんだよ・・・」






 あきらかに俺が悪いのは確かで、ケンイチの言う事ももっともで、いつもの俺ならここで反省する所だが・・・今日の俺はホント・・・・・・・最低で最悪な俺で。










「イライラなんかしてねーよっ!!!時間もないって言ってるのに、のんびりしているから言ったまでだろっ!いい加減にしてくれよ!!!」










 そんな事を吐き捨てて、俺は勝手にブースから飛び出しスタジオも抜け出した。












 きっと今頃みんな怒ってるに違いない・・・と。




 きっと今頃みんな悲しんでるに違いない・・・と。




 きっと今頃みんな・・・・・俺の事を最低だと思ってるに違いないと、そんな事を考えていた。

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「・・・取りあえず休憩・・・って事でいいか、ヨースケ?」






 加納がそう言ってふっと笑った。



 それになぜか俺もつられて笑ってしまう。・・・それはみんなもだったらしい。



「そうだな?ひとまず休憩って事にするか!よーし!各自30分間の休憩!!!」



 俺の声に加藤がやっとホッとして、ケンイチも少し機嫌が直って、おっくんもにんまりと笑顔になった。



「そんじゃ俺は・・・姫の機嫌を伺いにいくとするか・・・」



 そう言って、俺の肩をポンッと叩いて加納が出て行った。



 それを「おう!頼むな?」と軽く答えて俺が加納を見送ると、加藤がすまなそうに笑った。





「ごめん・・・俺今日なんか調子が悪いみたいで・・・」




「んー?いや気にすんなって?・・・・・色々疲れてるから仕方ねーよ?」




 俺がそう答えるとケンイチはつまらなそうに愚痴る。




「なーんかさ?みんなレオに甘いよなー?俺のほうが年下だってーのに・・・」




 そんなケンイチにおっくんはナデナデと頭をなでながらからかった。




「どないちたんでちゅかー?ケンイチちゃんは甘えん坊ちゃんやね〜?ヤキモチやいてるんでちゅか〜v」











 それに「違ーう!!!」と真っ赤になりながら騒ぐケンイチやおっくんに加藤もいつもの笑顔が戻る。

 









 みんなわかってるんだ。



 どうしてレオがあんなにイライラしているのか。



 わかっているから・・・・・・・・・・機嫌直して帰ってこいよ・・・レオ。

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「俺・・・すっげーやな奴だよね?」










 何も言わず俺が近づくとレオはそう言って目を閉じた。



 俺が答えないでいると、レオはまた静かにつぶやく。



「・・・わかってるんだ・・・加藤のせいじゃないって。俺が変にイライラしてて、勝手に八つ当たりしてるって・・・わかってるんだ・・・」



 ゆっくりと開けたレオの目に反省の色が色濃く見えて、俺はポンポンッと肩を叩いてやる。



「・・・だめなんだ・・・この頃。妙にあせって、何しても気に入らなくて・・・加藤だけじゃない、他の奴にも当たって・・・」









「周りがなんと言おうと、お前はRAG FAIRの土屋レオに代わりはないさっ?」










 ボソッと言った俺の言葉。



 レオの肩がピクッと反応して、小さくうなずくのを感じた。



「加納・・・俺お前に惚れそう・・・・・」



 そう言いながらレオは照れ隠しのように俺の肩に頭を乗せてきた。









「世の中そんなに甘くない・・・」









 迷わず俺に肩透かしを食らったのは言うまでもないが。










 みんなわかっているんだ・・・みんなの期待に答えようと思って、がんばってるお前の事を。






END



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少しだけイメージを変えた感じの礼央さん小説です。

礼央さんってすっごく頑張り屋だと思うんですね?
トークや雑誌などには加藤さんが一番だとよくみんなで言っていますが、
私は礼央さんが一番こだわりを持って、頑張り屋だと思ったのでこんな感じの話を?

初めてRAGに入って、しかも初めてのアカペラ・・・普通なら不安ばかりだと思いました。

そんなのを感じてもらえると嬉しく思いますv







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