風が吹いたから、なんとなく空を飛んで。





月が綺麗だと思ったから、眺めのいい場所に降り立って。





少しだけ話し相手がほしいと思っていたら・・・・・





お前がやってきた。





だから正直・・・・・嬉しかった。





















「あぁ・・・綺麗な月だ・・・」





 誰に聞かせることも無いそのつぶやきは、真っ白い月明かりの下でぽぅと現れすぐ消えた。




 今は人間達が寝静まっているであろう時間。

 不意に目が覚め、外に出た俺は少し小高い丘の上で夕涼みをしていた。





 肌をなでていく風はひんやりとしているものの、妙に火照る体には丁度良い風であった。





 昨日のランシーンとの戦いで、危険な目にあった風のサーガの苦しそうな表情が今も目に焼きついてはなれない。





『気にすんなねずっちょ!俺はこの通りぴんぴんしてるんだからな!』





 そう俺に向かい叫んだあいつは立ち上がる事さえままならない状態だったと思い出す。





「ふらふらだったくせに・・・何言ってるんだか・・・あいつは」





 そうまたつぶやいて、自分の拳を地面に叩きつける。

 何度も、何度も、何度も、何度も・・・・・そして「っち!」と小さく舌打ちし、自分のふがいなさに目をつむっていた。





 体が、ランシーンに対する怒りと、自分に対する嫌悪感で熱く煮えたぎる夜。





 誰もいないその場所で、俺は月を見ていた。
















「・・・・・・自分を責めているのか?」





 突然背後からそんな声が聞こえ、ハッとし思わず身構え振り向く俺に、





「そんなに気を張っていては・・・・・何も解決はしないぞ風?」













 そこにいたのは見知った仲間。





 土のレジェンズであるガリオン。





「・・・気配もなしに背後から近づいてくる方が悪いだろう?この場合・・・」





 思わず慌てた自分に少し恥ずかしさを感じながら、ゆっくりと近づいてくるガリオンはクスクスと小さく笑った。





「すまぬ・・・お前の風を感じたので、思わず来てしまったのだ・・・」





 ガリオンはそう言い、ちらりと俺を見て目を細めて笑みを浮かべる。

 ぞくりと背中を流れる、なんとも言えない感覚に胸が一度高く跳ね上がるのを感じた。





「・・・俺の・・・風・・・・?」





 誤魔化す様に俺はそう言って、少し馬鹿にしたように鼻で笑ってみせる。





(・・・なんだ今の・・・・・・・・・感覚は?)





 感じた胸の高鳴りを不信がりながら目をそらす俺に、ガリオンは静かに月を見つめながら言葉を発する。

 それはまるで歌でも歌うかのような、美しい響き。





「風が吹いたのだ・・・微かな風。ひどく不安げな・・・・・それでも強くあろうという思いの詰まった風が。」





 目を細め青白い月を見つめるその瞳は、ひどく疲れきったような、全てを見透かしているような光を放つ。

 一言一言・・・放たれるその言葉はなぜか俺の心を癒していくようだった。





「・・・俺は弱くは無い。不安だとも思ったりはしない・・・」





 少しムッとしてそう言うと、ガリオンは一瞬驚いた顔をし、しかしすぐにふっと笑みを浮かべる。





「そうか・・・それはすまなかったな?ではあの風は誰だったのだろうな?」





 俺に問いかけるようにそう言うガリオンに、俺は「さぁな?」と軽く返答する。





「・・・・・私はてっきりお前だと思ったのだが・・・・・・ではここにいる意味が無いな?私は戻ろう・・・」





 ガリオンはそうつぶやいて大きな羽を広げる。





「って!?もう帰るのか?!」





 思わずそう言って広げた羽を無意識につかみ、慌てて叫んだ俺にガリオンは心底驚いた表情で動きを止めた。





(・・・・って俺は何をしてやがるんだ!?)





 思わずつかんだその羽も、必死に叫んだその顔も、どうしようもないほど恥ずかしくなってくる自分に・・・・・固まる俺。





 だらだらと妙な汗が流れるのを感じながら見つめたままの俺に、ガリオンは「はっ!」と大きな声で笑い出す。





 目の端に涙を溜め、カーッと赤くなる俺の目の前でガリオンは腹を抱えて笑っていた。





「・・・・・・・・・・っ!」





 どうしようもない恥ずかしさが体中を回る。

 先ほどとは違う体の熱さを感じながら思わず乱暴気味にガリオンの羽を手放すと、ガリオンは「すまんすまん」と笑いながら声を出す。





「すまん・・・お前があまりにも正直な事をするから・・・」





「う・・・うるせーよ!もういい!さっさと帰れっ!」













 こんな情けない自分を見てもらいたくなくて・・・





 こんな正直な自分が恥ずかしくて・・・






 こんなにも・・・・・・・・・・・側にいてくれた事に喜んでいた自分にどうしていいのかわからなくて・・・













 背を向けた俺に、ガリオンは静かに触れてこう言った。




















「そんな正直なお前も・・・・・・・嫌いではないぞ・・・?」





 少しだけ笑ったような言い方に、少しムッとしながらも誤魔化すように俺は小さくつぶやいた。











「・・・・・あぁ〜・・・・・・月が綺麗だ」



  





END









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すごいね?レジェンズ擬人化?小説2話だよっ?!(笑)

自分でもびっくりでさー?(汗)なんかレジェンズTVで観る度に妄想が暴走していきます。
どうしたことだ・・・(//□//;)
それほど自分の中でははまっているって気もしないんですけどね?いや、やっぱはまっているのか?・・・よーわかりませんが(笑)

今回はガリオン嬢少し可愛らしく書きました。そしてシロンは真面目には書けませんでした(おい)
自分の中でのガリオン嬢とはちと違う気がしながらも、書いていくとどんどん可愛く感じて・・・こんなガリオン嬢もありだなと?(ありなのかよ)

今回はそれほど擬人化っぽくも無かった気がします。でも頭の中では奴らは擬人化して動いているんですけどね?(笑)

はぁ〜楽しかったv







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