「あぁ・・・ハーマイオニーが余計な事言うからぁ・・・」
今日は楽しみにしていたハローウィン当日。
朝からワクワクしていたら、ハーマイオニーがなぜか机に向かっていた。
「・・・何してるの?ハーマイオニー。大広間に行きましょ?」
そしたら彼女はなんて言ったと思う?
「何言ってるのよ?宿題やらないと?」
そうして思い出したのは・・・後で後でと遠まわしに拒否していた魔法薬学の宿題。
やってはいたんだけど・・・「提出するの忘れていたわー!?」ガックリと肩を落として・・・私は泣く泣く教員室へ。
苦手な科目魔法薬学。そして苦手な先生・・・セブルス・スネイプ先生。
この宿題を届けにいかなくちゃ・・・と重い足を引きずりながら。
「す・・・すみませぇ〜ん・・・」
情け無い声が不気味な部屋に響く。
明らかに人体実験とか、怪しげな薬とか作っていそうなこの部屋。
ギィィィ・・・と扉が開けば、消毒薬の匂いが鼻につく。
「先生・・・?スネイプ先生・・・・?」
大きな声では無いが、呼んでも返事がなく。
けれどこれで宿題を明日の日とかに持っていけば、
「グリフィンドール10点マイナスだ・・・・・」
なんて声がかかるに違いない。・・・え?
ギギギ・・・なんて、音がしそうな感じで後ろを振り向けばそこに立っていたのは噂の陰険教師・・・もとい、スネイプ先生。
「ぎゃぁー!!?」
と思わず叫んでしまったのは・・・仕方がない事よね?ね?
「ほぅ・・・宿題を持ってきたというのか?ミス・。それは感心な事だな・・・・・だが、教師がいない部屋に勝手に入ろうと・・・」
宿題をさっさと渡して、こんな不気味な所から出て行こうとしたら・・・なぜか実験に使った器具を洗わされているのはどうし
てかしら?・・・なんてズーンと空気も重く私が一生懸命やっていれば、横からグチグチとグリフィンドールの文句やら、ハリ
ーに対しての愚痴やら・・・いい加減にしてよね。
そんな事思っていたのが、素直に顔に出ていたのか?スネイプ先生はじっと私を見つめながら、
「聞いているのかね?ミス・。」
と念を押してきた。「き・・・聞いていますです!」・・・へたにぼんやりもしていられないのかよ!と内心突っ込み。
もうなんだかすごく疲れて、このままハローウィンを楽しめないまま終わるんじゃないか?なんて思いながら一生懸命洗っていると、
ふいにスネイプ先生の大きな声がかかる。
「・・・・・!?!それはまだ薬品が入ってるぞ!!!」
え?・・・そう思った時はすでに遅し。
私はぼんやりとしていながら薬品が入ったままのビーカーを手にして洗おうとして・・・中の液体を思いっきり手にかけてしまっていた。
「熱っ!?」
シューと言う白い煙と音が部屋に響く。液体がなんなのかはわからないが、手が熱く真っ赤になって火傷のような状態になっていた。
ヒリヒリとズキズキと・・・兎に角声が出ないくらいの痛み。
ふらりと眩暈さえ起こるようなそんな痛みで倒れそうになった私を、後ろから抱きかかえてくれたのは・・・なんとスネイプ先生で。
「せ・・・んせぃ・・・・・熱・・ぃ・・・」
多分そんな事を言ったんだと思う。そんな私に先生は、「大馬鹿者!!!」と大きな声を出したのは薄れていく中で聞いた気がした。
「・・・ん・・・・・・・・?」
目が覚めれば、見た事の無い天井。そして意識が冴えてくればズキッと手の甲に痛みが走る。
(あぁ・・・そう言えば私・・・ぼんやりしてて・・・)
また私のせいで、グリフィンドールの点数が引かれてしまう。そう思うとここがどこかもわからないまま声を出して泣いてしまった。
すると・・・
「目が覚めたか・・・ミス・。」
今は聞きたくない声が聞こえた。いつも嫌な事を言う声。
ハッとして起き上がると、そこはまだスネイプ先生の部屋だと知り、慌てて涙を拭く。
そんな私を気にした風もなく、先生は側に歩み寄ってきて・・・私の側に腰を下ろした。ゆっくりと怪我をした手を掴んで状態を見て。
それはひどく落ち着いた様子だった。怒るでもなく、心配するでも無いそんな表情。ただ淡々とての様子を見ているだけ。
息苦しいと感じた。今のこの状況がひどく息苦しいと。これならば、いっその事怒ってくれた方がどれだけましか?そんな事思っていると、
先生はやっと手を離し、ため息をついた。ホッとしたような、少し優しい表情で。
「あっ・・・あの・・・先生。私・・・・・」
やっと出た声はひどく小さく、怯えたような声だったのだろう。先生はちらりと私を見て、「気をつけたまえ・・・」そうつぶやいただけだった。
「・・・ご・・・ごめんなさい・・・・・・」
また涙が流れる。怒られなかった事が意外で、でも心配かけさせてしまった事が申し訳なくて。
先生はしばらく私を見つめていて、また手に触れてくれた。
「誤るくらいなら、もうぼんやりと仕事をしない事だなミス・。仮にも君は女性だ。傷が残ったらどうするのだ・・・」
反省したまえ・・・そう淡々と言葉を紡ぐ。けれども、先ほどまでのきつい感じはなく。むしろ・・・暖かい感じで。
「傷が残ってしまったら・・・君を面倒見ないといけなくなってしまうからな・・・」
ふいにそう言って、先生は立ち上がり自分の机へと歩いていく。
その言葉に驚いて、目を丸くしている私に先生は「マダム・ポンフリーの所へ行きなさい・・・」そう告げるだけだった。
バタンと閉まる扉。
その前で少し呆然としながら私は立ち尽くしてしまって。段々と頬が熱くなるのを感じた。
「何・・・まさか・・・ね・・・?」
ドキドキと妙に心臓が大きくなって、先生が触れてくれた手がとても熱く感じた。
そして・・・思い出すのは、先生が私の名前を呼んでいたあの時の事。
不思議な気持ち。初めての気持ち・・・もしかして私、先生の事?・・・そう思ったハローウィンの日。
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